中小企業退職金共済制度(中退共)というものがあります。これは、中小企業退職金共済制度というもので、私が経営しているような大きくない小さな会社でも、従業員のために退職金を積み立てておける制度です。
実際に、うちの会社では5月に、長年勤務してくれていた女性スタッフが退職しました。その方は足掛け7年ほど積み立てをしており、退職後に中退共から約230万円が退職金として支給されるという話になりました。

会社が中退共に加入していると、毎月決まった日に会社の口座から掛金が引き落とされます。その掛金が従業員の退職金として積み立てられ、従業員が会社を辞める際には、中退共から本人に退職金が支給されるという仕組みです。
また、会社側からすると、利益が出ている場合には掛金を損金として計上できるため、節税効果が期待できるというメリットもあります。ただし、会社の資金繰りが悪化している、キャッシュフローが厳しい、お金が足りないといった状態で無理をして加入するような制度ではないと私は考えています。
ある程度余裕があり、きちんと利益を出せている会社が、従業員のために福利厚生の一環として掛金を積み立てる。そういう場合には、とても良い制度だと思います。一方で、売上も利益もカツカツという会社が、無理をして加入するものではないのかなと思います。
そして、もう一つ注意しておきたいのが、会社の資金繰りが悪化した場合です。例えば法人保険であれば、保険を解約することで解約返戻金が会社に戻ってきて、資金繰りに充てることができる場合があります。しかし、中退共はそれとは仕組みが大きく異なります。
私も実際に中退共へ問い合わせて確認したのですが、会社の資金繰りが悪化したからといって、中退共を解約して会社にお金を戻すということはできません。中退共を解約する場合には、従業員本人の同意が必要になります。
例えば、「会社の資金繰りが悪化している」「売上が大変な状況になっている」「利益が出ておらず、赤字になっている」といった事情を会社から従業員に説明し、そのうえで解約について同意してもらう必要があります。
解約する場合は、中退共の所定の書類に会社が必要事項を記入して手続きを行い、さらに従業員本人から直筆で同意のサインをもらう、といった流れになります。書類を提出して手続きが認められれば、会社にお金が戻ってくるのではなく、退職金に相当するお金が従業員本人の口座に振り込まれることになります。
私が中退共に確認したケースでは、例えば8月から9月にかけて掛金の引き落としがあった後、9月中に解約の書類を提出し、従業員本人の同意を得て手続きが完了した場合、翌月末の10月末に従業員本人の口座へお金が振り込まれる、という流れになります。
つまり、中退共は法人保険のように「会社が困ったときに解約して、会社の口座に現金を戻す」という性質のものではありません。あくまで従業員のための退職金制度なので、解約した場合も基本的には従業員本人にお金が支給されます。
そのため、会社の資金繰りが厳しくなった場合に、そのお金を会社としてどのように扱うのかについては、従業員本人としっかり話し合う必要があります。また、ここで気をつけなければいけないのが税金の扱いです。従業員側で確定申告が必要になるのか、所得としてどのように扱われるのかなど、個別の状況によって対応が変わる可能性があります。
このあたりについては、社会保険労務士や税理士などの専門家に確認したうえで対応することをおすすめします。
中小企業退職金共済制度は、小さな会社が従業員を守るという意味では、とても良い制度だと思います。長く働いてくれた従業員に対して、会社から退職金を用意する仕組みを作ることができますし、会社側にも税制上のメリットがあります。
ただ、先ほどもお話ししたように、資金繰りに余裕がない会社や、利益が出ていない会社が無理をして加入するものではないと思います。まずは会社の経営を安定させ、きちんと利益を出してキャッシュを残せる状態を作る。そのうえで、従業員のための福利厚生として中退共を活用する。私は、そのような順番が大切なのではないかと思います。
中小企業退職金共済制度(中退共)の制度とは?
「中小企業でも退職金制度を整えたいが、社内で積み立てや規程整備まで行うのは負担が大きいのではないか」。
そのように感じて調べている経営者さん、人事・労務担当者さんは少なくないですよね。
中小企業の退職金制度づくりには、資金繰りの見通し、長期の積立管理、従業員さんへの説明など、実務上の論点が多くあります。
一方で、採用・定着や福利厚生の観点から、一定の「退職金の見える化」を求める声もあります。
そこで選択肢になるのが、中小企業退職金共済制度(中退共)です。
中退共は、中小企業が単独で退職金制度を持ちにくい点を補うために設けられた公的な共済制度で、事業主さんが掛金を納付し、退職時には中退共から従業員さんへ直接退職金が支払われる仕組みです。
この記事では、制度の定義から加入条件、メリット・留意点、導入時の考え方まで、実務で迷いやすい点を中心に整理します。
中小企業退職金共済制度(中退共)は「社外積立型」の公的退職金制度です
中小企業退職金共済制度(中退共)は、独力では退職金制度を設けることが難しい中小企業のために、事業主さんの相互共済と国の援助によって退職金制度を設ける公的制度です。
法的根拠は中小企業退職金共済法で、昭和34年に創設された制度です。
運営主体は、独立行政法人 勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済事業本部とされています。
仕組みの基本は明確で、事業主さんが毎月掛金を納付し、退職時には中退共から従業員さん本人へ直接退職金が支払われます。
会社が社内で退職金原資を積み立て続ける方式とは異なり、外部に積み立てる点が制度の中核です。
中退共の仕組みを理解するための基本ポイント
制度が生まれた背景は「中小企業でも退職金を整えやすくする」ことです
退職金制度は、就業規則や退職金規程の整備、積立の継続、支給時の資金準備など、長期の管理が必要です。
特に中小企業では、景気変動や人員構成の変化を受けやすく、社内積立だけで退職金原資を平準化することが難しいケースもあります。
中退共は、そのような事情を踏まえ、中小企業の退職金制度整備を支える公的制度として位置づけられています。
厚生労働省や自治体の案内ページでも、制度の概要、加入対象、掛金、手続きが継続的に周知されています。
直近の動向としては、制度の根幹改正というより、案内ページや試算ツールの整備など、利用促進・理解促進が続いている状況が確認されています。
掛金は事業主が全額負担し、毎月納付します
中退共の掛金は、毎月の掛金を事業主さんが全額負担して納付する仕組みです。
従業員さん本人が掛金を負担する制度ではない点は、導入時の説明で重要になります。
だいたい毎月中頃に口座から引き落としがかかるようになっています。こちらは遅れた場合何度か電話したのですが振込では対応してもらえないので、口座引き落とししかできないのが特徴です。
また、掛金は金融機関を通じて納付する形が案内されています。
運用や積立の管理を社内で完結させるのではなく、制度として外部に積み立てるため、社内事務の設計が比較的シンプルになりやすいと考えられます。
退職金は会社ではなく「中退共から従業員さんへ直接」支払われます
中退共の大きな特徴は、退職時の支払いが中退共から従業員さん本人へ直接行われる点です。
つまり、会社が退職金をいったん受け取り従業員さんへ渡すのではなく、共済制度から支給されます。
この構造により、社内積立型の退職金制度で論点になりやすい「退職時にまとまった資金を社内で用意できるか」という資金繰りリスクの一部を、制度設計として分散しやすい面があります。
一方で、退職金の算定・支給の考え方は制度のルールに沿うため、社内制度と同じ自由度を期待するとギャップが生じる可能性があります。
加入できるのは「一定規模以下の中小企業」です
中退共は中小企業向け制度であり、加入できる企業規模には基準があります。
基準は、常用従業員数または資本金・出資金などで判定されると案内されています。
ここで重要なのは、加入可否が「業種」や「会社の実態」によって変わり得る点です。
導入を検討する場合は、厚生労働省や中退共の公式案内、自治体の案内ページなど、一次情報で条件を確認することが適切です。
一般の中小企業向けのほか、特定業種向け制度もあります
中退共制度には、一般の中小企業向け制度のほか、建設業・清酒製造業・林業などの特定業種退職金共済制度があると整理されています。
業界特性(雇用の季節性、現場移動、就労形態など)に配慮した制度が用意されている点は、制度群としての特徴と言えます。
自社がどの枠組みの対象になるかは、加入条件の確認と合わせて整理すると、制度選択の誤りを減らしやすいと考えられます。
中退共を導入する際に押さえたいメリットと留意点
福利厚生として「退職金制度がある」状態を整えやすいです
中退共は、公的な共済制度として、退職金制度の土台を作りやすい点が評価されることがあります。
特に、退職金制度が未整備の会社では、採用時の説明や従業員さんの安心感の観点で、制度の有無が話題になりやすいと思われます。
また、制度の枠組みが明確で、掛金納付と退職時支給の流れが整理されているため、社内の運用設計を一定程度定型化しやすい面があります。
「退職金をどう設計し、どう積み立て、どう支払うか」をゼロから作らないという意味で、導入のハードルを下げる効果が期待されます。
社外積立のため、内部留保だけに依存しない設計になりやすいです
社内積立型では、退職金相当額を内部で管理し続ける必要があり、長期的には資金の見える化や引当の考え方が論点になります。
中退共は、掛金を制度に納付し、退職金は中退共から直接支給されるため、社内で「退職時の一括支払い資金」を用意する設計とは異なります。
もちろん、掛金の支払いは継続的な負担です。
ただし、毎月の掛金として平準化しやすい点は、資金繰りの見通しを立てるうえで利点と捉えられる可能性があります。
税制面のメリットが注目されることがあります
近年の解説記事では、中退共に関して税制メリットが注目点として扱われる傾向があると整理されています。
一般論として、退職金制度の設計では、会計・税務上の取り扱いが意思決定に影響する場面が多いです。
ただし、税務の取り扱いは企業の状況や会計処理方針、制度の選び方によって影響が異なる可能性があります。
この点は、顧問税理士さんや社会保険労務士さんと相談しながら、一次情報を確認して整理することが望ましいと考えられます。
制度に沿った運用が必要で、自由設計には限界があります
中退共は公的制度であるため、企業独自のルールで柔軟に設計できる領域には限界があります。
例えば、退職金の水準を職種別に細かく設計したい場合や、独自の支給条件を強く反映させたい場合は、制度との相性を検討する必要があります。
また、退職金が「中退共から直接支給」される仕組みは、企業側の支払い実務を軽くする一方で、従業員さんへの案内や手続きの段取りを丁寧に設計しないと、退職時の不安につながる可能性があります。
制度の安心感を活かすには、社内説明の整備が重要です。
加入条件の確認と、対象従業員さんの範囲整理が重要です
中退共は中小企業向けで、加入条件が「常用従業員数」または「資本金・出資金」等で判定されます。
このため、成長フェーズの企業では、将来の規模変化も見据えたうえで検討することが実務上は重要になります。
さらに、導入時には「どの従業員さんを対象にするか」を社内制度として整理し、雇用形態ごとの説明を揃える必要があります。
対象範囲が曖昧なまま進めると、福利厚生の公平感に関する論点が生じる可能性があります。
中退共の理解が深まる具体例
例1:退職金制度がない会社が、福利厚生の土台として導入するケース
創業から年数が浅い会社では、売上の見通しが変動しやすく、退職金を社内で積み立てる余裕が作りにくい場合があります。
その結果、退職金制度が未整備のまま採用活動を続けることもあります。
このような場面で中退共を検討すると、事業主さんが毎月掛金を納付し、退職時に中退共から従業員さんへ直接支給という枠組みを使って、退職金制度の「ある状態」を整えやすくなります。
従業員さんへの説明も、「会社が社内で積み立てるのではなく、公的制度に掛金を納める方式です」と整理しやすいと考えられます。
例2:社内積立の退職金から、外部積立へ一部を移して管理負担を軽くしたいケース
従来、社内で退職金を積み立てていた会社でも、従業員数の増加や勤続年数の長期化により、将来の支給額が大きくなり、資金準備の管理が難しくなることがあります。
また、退職金規程の見直しや、支給原資の説明責任が課題になる場合もあります。
中退共は、外部積立型であり、退職時には中退共から従業員さんへ直接支給されます。
そのため、社内の管理負担を軽くしたい意図で、制度を組み合わせて検討する会社もあると思われます。
ただし、既存制度との整合性や従業員さんへの説明は重要で、制度移行の設計には専門家の関与が望ましい場合があります。
例3:採用時の説明で「退職金の仕組み」を明確にしたいケース
中小企業の採用では、給与水準だけでなく、福利厚生や将来の安心感が比較材料になります。
その際、「退職金制度があるか」「どのように積み立てるか」を質問されることがあります。
中退共を導入している場合、採用面談や内定者説明で、次のように整理しやすいと考えられます。
- 退職金制度として中退共に加入していること
- 掛金は事業主さんが毎月納付すること
- 退職時は中退共から従業員さん本人に直接支払われること
制度の仕組みが定型化されていることは、説明のばらつきを抑えるうえでも役立つ可能性があります。
例4:退職金のイメージを「試算」で共有したいケース
退職金制度は、従業員さんにとって「結局いくら受け取れるのか」が最も関心の高い点になりやすいです。
中退共では、退職金のシミュレーションが利用できると案内されています。
例えば、社内説明会や個別面談の場で、試算結果をもとに「掛金と勤続期間によって退職金の見通しが変わる」ことを共有すると、制度理解が進みやすいと考えられます。
ただし、試算は一定の前提に基づくため、説明時には「概算である」点を明確にし、誤解が生じないよう配慮することが適切です。
加入前後の手続きで押さえたい実務の流れ
まずは加入条件と対象従業員さんの整理から始めます
導入検討では、最初に「自社が加入条件を満たすか」を確認します。
中退共は中小企業向けで、常用従業員数や資本金・出資金などの基準で判定されるとされています。
次に、社内で「誰を対象にするか」を整理します。
雇用形態が多様な会社ほど、対象範囲の説明が重要になります。
制度は導入するだけでなく、説明して初めて福利厚生として機能します。
掛金設計は、継続可能性と人材戦略の両面で検討します
掛金は毎月の固定的な支出になりやすいため、継続可能性の検討が欠かせません。
一方で、採用・定着の観点では、退職金制度の見え方が競争力に影響する可能性があります。
このため、掛金設計は「無理のない範囲で、制度として説明できる水準」を探ることが実務的です。
必要に応じて、退職金シミュレーションを活用し、従業員さんにとっての見通しも含めて検討すると納得感が高まりやすいと考えられます。
制度説明は、入社時・在籍中・退職時の3点で整備します
中退共は、退職時に中退共から従業員さん本人へ直接支給されるため、退職時の手続きイメージを事前に持てるようにしておくことが重要です。
説明のタイミングとしては、次の3点が基本になります。
- 入社時:制度の概要、掛金は事業主さん負担である点、退職時の支給主体
- 在籍中:制度変更や掛金変更がある場合の周知、試算の考え方
- 退職時:必要手続き、支給までの流れ、問い合わせ先の案内
この整理ができていると、従業員さんの安心感につながり、制度の価値を発揮しやすくなります。
中小企業退職金共済制度(中退共)とはどのような制度?の要点
中小企業退職金共済制度(中退共)は、中小企業が退職金制度を整えやすくするために、事業主さんの相互共済と国の援助によって設けられた公的制度です。
法的根拠は中小企業退職金共済法で、昭和34年に創設されたとされています。
制度の仕組みは、事業主さんが毎月掛金を納付し、退職時に中退共から従業員さん本人へ直接退職金が支払われる点に特徴があります。
加入条件は、常用従業員数や資本金・出資金などの基準で判定されるため、一次情報での確認が重要です。
また、一般の中小企業向け制度のほか、建設業・清酒製造業・林業などの特定業種退職金共済制度がある点も押さえておくと、制度選択の精度が上がりやすいと考えられます。
退職金の試算(シミュレーション)も利用できると案内されているため、社内説明の補助として活用が検討できます。
次の一歩として、公式情報の確認と社内整理から始めるのが現実的です
中退共は公的制度であり、制度の定義・仕組み・運営主体・加入条件・手続きは、厚生労働省や中退共(勤労者退職金共済機構)の案内、自治体の案内ページなど、信頼性の高い一次情報で確認できます。
まずは、自社が加入条件を満たすか、そして対象従業員さんの範囲をどうするかを整理することが、導入検討の出発点になります。
そのうえで、掛金設計と社内説明(入社時・在籍中・退職時)をセットで整えると、制度が形だけになりにくいです。
判断に迷う点がある場合は、顧問の社会保険労務士さんや税理士さんに相談し、公式情報に沿って進めることが望ましいと考えられます。

