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【徹底解説!】火災保険と地震保険は必要ない?補償範囲や補償内容、保険金支払実例は?

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自分が住んでいる大事な家が火事になってしまった場合、地震で家が倒壊してしまった場合などで補償されるのが火災保険や地震保険です。

火事の時だけの補償だったり、地震が起きた時だけの補償であれば、それほど必要性を感じないという人もいるかもしれません。

しかし、火災保険や地震保険は損害保険の中でも加入率がかなり高いのも事実。

大きな必要性や需要があるから存在している保険とも言えます。

今回は、以下内容を分かりやすく説明します。

  • 火災保険や地震保険は本当に必要なのか
  • 火災保険と地震保険の補償内容と範囲
  • 火災保険と地震保険の保険料と払込方法
  • 火災保険に付帯できるオプション
  • 火災保険や地震保険の支払い事例

1.「火災保険」と「地震保険」の違いとは?

火災保険は、損害保険といった「もの」に対する保険の一種で、住宅などの「建物」に対する補償と、家具や設備などの「家財」に対する補償があります。

基本となる補償内容は、火事や落雷などによる「火災に対する補償」、台風や突風による浸水や屋根の破損など「自然災害に対する補償」、盗難や誤って自宅の壁を壊してしまったなど「日常生活に対する補償」です。

この内容であれば、全ての「自然災害」に対応できる気もしますが、地震に対する補償は別途「地震保険」を付帯しなければ対象外です。

「火災保険」のみに加入し、火事になったり台風により屋根が破損したりした場合は補償対象ですが、「火災保険」のみに加入し、地震により火事が起きたり屋根が破損したりした場合は補償対象外となり、1円も保険金を受け取れません。

参照元:地震保険|一般社団法人日本損害保険協会

2.持ち家の火災保険と賃貸の火災保険

持ち家・賃貸の火災保険

火災保険の補償がスタートする日を「保険始期日」と言います。

保険始期日は、火災保険申込日以降の任意の日に設定可能で、基本的には物件の引き渡し日を保険始期日と設定します。

持ち家の場合は、持ち家用の火災保険に加入し、賃貸の場合は、賃貸用の火災保険に加入します。

賃貸契約をする際、火災保険への加入を義務付けている不動産屋がほとんどですが、火災保険に加入させたい理由は、「借家人賠償責任補償」が付帯されているからです。

「借家人賠償責任補償」とは、水濡れ事故を起こしたり、偶然火事を起こしてしまったりした場合の賠償責任を補償します。

日本には失火責任法があり、基本的には火災の場合の賠償責任であれば請け負う必要がありませんが、賃貸契約では原状回復の義務があるため、万が一事故を起こしてしまった場合、賠償の責任があります。

その他の補償内容については、自由に決められるうえに、不動産屋が指定する火災保険以外の保険商品は自分でも選択可能です。

保険会社の商品により、不動産屋が指定した火災保険より安く加入できる場合が多いので、賃貸の場合でも比較して加入するのがおすすめです。

3.火災保険と地震保険の必要性

火災・地震保険の必要性

結論から言うと、火災保険と地震保険は必ず入るべき保険のひとつだと考えています。

まず、火災保険については住宅の場合、賃貸であれば不動産屋や大家さんに加入を促される保険ですが、持ち家の人も漏れずに入る必要があります。

何故なら、メインの補償のひとつ「火災」のリスクだけを考えてみた場合で、どんなに自分が気を付けていたとしても、近隣の住宅からのもらい火や、自然発火等防ぎようのないリスクがあるからです。

明治時代に日本にできた法律で、悪意なく発生した火事による近隣への賠償責任は問われないといった「失火責任法」があります。

たとえ原因がはっきりしていて、自分自身に故意や過失がなかったとしても、誰も守ってくれません。

また、火災保険は2014年以降を皮切りに、保険料の値上げや、長期契約の廃止など改定を繰り返しています。

これは、異常気象によって日本各地で台風や暴風雨が増加し、水災や風災の支払いが増えたためです。

もし、家を建て直したり、修理したりしないといけなくなった場合、住めるようになるのに半年から1年程度かかると言われています。

再建費用はもちろんのこと、再建中の仮住まいの費用や、瓦礫の撤去費用など想像以上に出費は重なります。

一家の大黒柱ともなる火災保険は、必ず納得のいく補償内容のものに入る必要があります。

次に、地震保険については、もし建物が倒壊してしまうほどの大きな地震が起きた場合でも、基本的には被害額満額を受け取り、家を元通りに立て直すというのは不可能です。

後ほど詳細を説明していきますが、ほとんどの場合被害額よりも少ない保険金受取額になります。

しかし、地震が起きた場合、建物の修繕だけでなく、当面の生活立て直し費用が必要なことがあり、住宅ローンが残っていれば返済に充てたり、収入の補填にしたりなども可能です。

どれだけの試算があるのかにもよりますが、近年の地震発生頻度や被害状況を考えると地震に対しての補償が何もないのは、リスクが大きいと感じます。

参照元:火災保険 10年契約廃止の方針 最長5年ごとの更新へ 大手損保|NHK WEB

4.火災保険と地震保険の補償額の考え方

補償額の考え方。新価と時価

 火災保険と地震保険は、「建物」と「家財」それぞれいくらの補償をつけるのか、すなわち「保険金額」を決める必要があります。

また、保険の対象となるものにつける値段を「保険価額」と言います。

「保険価格」は、建物であれば築年数や建物の素材、広さ等で評価され、「新価」と「時価」といった二通りの考え方があります。

まず「新価」とは、今あるものとまったく同じものを新品で購入するためにいくら必要かという考え方です。

新築であれば購入金額同等、築20年の住宅であれば物価の上昇や流通が加味され、購入金額よりも高い金額で評価されるのがほとんどです。

次に「時価」は、同等のものを新たに購入するために必要な金額から、時間の経過とともに雨風や自然劣化を加味して現時点での評価を金額に換算する考え方です。

今あるものと同等のものを新品で購入するとなると、費用としては自己負担分が出たり、今あるものよりもグレードを下げたりする必要がありますが、その分保険料は抑えられます。

万が一火災や自然災害などの被害に遭ったとき、どのようにしたいのかを今一度考えて、納得のいく評価方法で保険金額を決めておくのが重要です。

参照元:火災保険の正しいつけ方~むだなく十分な補償を得るためには~|SONPOホールディンス

5.「建物」と「家財」の範囲

補償範囲。建物と家財

火災保険と地震保険の補償対象の大枠になるのが「建物」と「家財」です。

「建物」は、文字通り建物本体や門、塀などの不動産です。

「家財」は持ち出し可能なテレビやテーブル、衣服などの動産です。

これらすべてが保険の対象になるわけではなく、建物であれば植木や敷地内にある別の建物、家財であれば1個30万円を超える貴金属や宝石、有価証券などは補償対象外になります。

ただし、オプションにより補償の対象を広げられたり、保険会社の保険商品により細かな違いがあったりするため、自身の住居の特徴やこだわりと照らし合わせて、どの保険が合うのかを比較するのがおすすめです。

中には、自分の家にはものがほとんどないため、家財に保険はいらないと考える人もいるかもしれません。

しかし、実際に保険金を請求しなければならないような火災や自然災害の被害に遭った場合、今まで通り住宅での生活はできなくなり、備蓄していた食品はダメになってしまうケースがほとんどです。

家財の保険は、家具や衣服の再購入費用としてだけでなく、食費や仮住まい費用、働けなくなった場合の給料など、生活立て直し資金としても使用できるので、経済状況や家族構成等加味したうえで試算し、付帯しておくのも一つの手です。

6.火災保険と地震保険は併用必須!

併用必須。見直しが必要な人

地震保険は、火災保険加入が必須条件のため、地震保険単体で加入できません。

地震保険が付帯されていない火災保険に入っている場合、その保険の見直しが必要です。

既に火災保険に加入している状態であれば、原則途中から地震保険に加入できます。

また、地震保険の対象になるのは、住居の建物と家財であり、店舗や施設等は地震保険の対象外です。

地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲内で決める必要があり、建物5000万円、家財1000万円までが限度額です。

中には、オプションとして地震保険の保険金額を火災保険の保険金額の50%以上に設定できる保険商品もあります。

原則として、地震保険は、地震による被災者の生活再建や生活の安定を取り戻すために作られたものであり、地震大国日本で大型地震が発生した場合も、地震保険に加入しているすべての人に補償を届けるために、保険金額の上限が法律で設定されています。

参照元:地震保険制度の概要|財務省

7.火災保険と地震保険の保険料支払い

火災保険と地震保険の支払い方法は、「口座振替」、「コンビニ払い」、「銀行振込」などが一般的です。

保険会社の保険商品によっては、口座振替しか対応していないといった商品もあるため、確認が必要です。

払込方法は「長期一括払い」「年払い」「月払い」を選択できます。

長期一括払いは、1度に支払う保険料は月払いよりも高くなりますが、長期一括払いの割引が効くため、トータルで支払う保険料は安くなります。

また、長期一括払いは、途中解約した場合に、未経過分の保険期間の保険料は返還される仕組みです。

さらに、長期一括払いであればクレジットカード支払いが認められる保険商品もあります。

ポイントを貯めている人は、効果的にポイントを貯められます。

月払いについては、基本的に短期契約(1年契約)の場合のみ選択可能です。

補償内容が魅力的であったとしても、月払いがある保険商品は限られているため、選択できない場合があります。

8.火災保険と地震保険の保険期間

保険期間。各保険の最長契約期間

火災保険も地震保険も短期契約(1年契約)と長期契約といった補償の期間を契約時に決められます。

まず、火災保険の長期契約は最長10年です。

以前までは、住宅ローン契約に合わせて最長36年契約が可能でしたが、2015年10月から火災保険の長期契約は最長10年に改定されました。

加えて、2022年10月以降、火災保険の最長10年契約が改定され、最長5年契約になる見込みです。

これは、毎年の損害保険金の支払い実績や今後の自然災害発生の見込みなどを加味し、長期契約で保険料を固定してしまうことはリスクであると保険会社が判断したためで、それだけ台風や水災などの自然災害のリスクが高くなっているということです。

保険契約が最長5年になると、5年ごとに更新することになりますが、保険会社としては保険料の値上げの調整がしやすくなり、実際2022年10月からは平均10%も保険料率が上がる可能性があります。

長期契約であれば、保険料率や保険期間、補償内容などの改定があった場合も、内容の変更がないため、短期契約よりも長い期間有利な補償内容で火災保険や地震保険を継続できます。

一方、地震保険の保険期間は最長5年です。

地震保険は火災保険と併用必須なため、火災保険の保険期間や支払い方法と合わせる必要があります

火災保険が2年〜5年の長期契約かつ一括払いであった場合、地震保険の保険期間と払込は「1年契約の自動更新」もしくは「火災保険と同様の保険期間(2〜5年)で一括払い」です。

次に、火災保険が6年〜10年の長期契約かつ一括払いであった場合、地震保険の保険期間と払込は「1年契約の自動更新」もしくは「5年契約の一括払い(自動更新)」です。

最後に、火災保険が年払いや月払いであった場合、地震保険の保険期間と払込は「1年契約の年払いもしくは月払い(自動更新)」です。

参照元:地震保険の保険期間を1年以上で契約することはできますか。|一般社団法人日本損害保険協会

9.火災保険の補償内容

火災保険の補償。具体的な例

火災保険には、いくつかの基本的な補償内容があります。

状況や対象によって内容に変化があるため、箇条書きで説明します。

基本的な補償内容について

火災、落雷、破裂/爆発

建物

例)火災により建物が全焼してしまった。

例)ガス漏れに気付かず、コンロの火をつけて爆発が起こり、建物が損壊した。

家財

例)火災により衣服が燃えてしまった。

例)落雷により、テレビが壊れた。

風災、雹災(ひょうさい)、雪災

建物

例)台風により屋根瓦がはがれてしまった。

例)雹(ひょう)により窓ガラスが割れてしまった。

家財

例)突風により窓ガラスが割れて、椅子が壊れてしまった。

例)雹(ひょう)により窓ガラスが割れ、雨が吹き込み、電化製品が壊れてしまった。

水災

建物

例)台風による洪水で、自宅が床上浸水し損害を受けた。

例)台風により土砂崩れで、自宅に土砂が流れ込み損害を受けた。

家財

例)台風による洪水で、自宅が床上浸水し電化製品が壊れた。

例)台風による土砂くずれで、衣類が泥まみれになり二度と着られない状態になった。

外部からの衝突、水濡れ、盗難など

建物

例)泥棒が自宅に侵入した際、ドアが壊された。

例)給水管が破裂したことによる水濡れで、床が腐って抜けた。

家財

例)自動車が自宅に衝突し、ソファーが壊れた。

例)泥棒が自宅に侵入し、現金が盗まれた。

破汚損(不測かつ突発的な事故)

建物

例)模様替えの際、誤って家具をドアにぶつけて壊してしまった。

例)掃除中に壁にものをぶつけて、うっかり壁を壊してしまった。

家財

例)子どもが室内でボールを投げ、誤ってテレビを壊してしまった。

自己負担額(免責金額)について

保険金請求の際の自己負担額が設定されているケースがあります。

火災保険では自己負担額を「免責金額」と言います。

免責金額は、「フランチャイズ方式」と「免責方式」の2種類あります。

フランチャイズ方式は、被害額が一定金額を超えた場合のみ保険金が支払われるという方式です。

例えば、フランチャイズ方式で免責20万円の設定の場合、被害額が19万円であれば受け取れる保険金額は0円で、被害額が21万円であれば受け取れる保険金額は21万円です。

次に、免責方式は一定の自己負担額を設定し、被害額から自己負担額を差し引いた保険金を受け取れる方式です。

例えば、免責方式で免責5万円の場合、被害額が4万円のであれば受け取れる保険金額は0円で、被害額が6万円であれば受け取れる保険金額は1万円です。

免責方式の場合、各保険会社の保険商品により0~20万円程の幅で、免責の金額にいくつかのバリエーションがあり、免責金額が高ければ高いほど万が一被害があった際の自己負担額が増えるので、保険料も割安になります。

その他

臨時費用保険金

臨時費用保険金は、火災や自然災害などが起きた場合の生活立て直し資金や給料の保険など臨時の出費に充てられます。

使い道は問われないため、保険金を自由に使えます。

大体の保険会社が1事故あたり損害保険金額の10%〜30%(限度額100万円〜300万円)程で設定している場合が多いです。

残存物片付け費用保険金

火災で住宅が全壊してしまった場合、取り壊しや清掃などの対応が必要です。

燃えた木材は再利用ができず処分費が多くかかったり、燃えた木材と燃えていない木材を仕分けるのに人件費がかかったりするため、通常よりも費用が多く掛かります。

一般的な解体・片付け費用は、住宅の構造や広さ、地域によって異なりますが、100万円以上かかるケースも珍しくありません。

残存物片付け費用保険金は、大体の保険会社が1事故あたり損害保険金額の10%を限度に設定している場合が多いです。

例えば、建物の保険金額が1,000万円の場合、100万円の残存物片付け費用が支払われます。

地震火災費用保険金

地震火災費用保険金は、地震や噴火、津波に起因する火災で建物や家財が半焼以上となった場合に、限度額の範囲内で損害保険金額の5%が支払われます。

例えば、建物の保険金額が1,000万円の場合、50万円の地震火災費用保険金が支払われます。

地震火災費用保険金は、地震保険とは別物です。

自動付帯の商品が多く、特に被害が拡大すると予想される地震の際に支払われる、お見舞金程度の役割なので、地震への備えは別途地震保険を持つ必要があります。

失火見舞費用保険金

失火見舞費用保険金は、火災、破裂、爆発により火災が起き、近隣の住宅等に火が燃え移ってしまった際の見舞金として支払われます。

重大な過失ではない、偶然起きてしまった住宅火災が原因の近隣住宅への延焼では損害賠償責任は問われません。

しかし、今後もその地に住み、ご近所づきあいをしていくことを考えると、一切何もしないわけにはいかないと感じる人もいると思います。

保険会社により様々ですが、1世帯につき20万円〜50万円を限度に支払うところが多いです。

損害防止費用保険金

損害防止費用保険金は、火災や水災などの被害を受けた場合、今後の損害を防止するために対処するための費用を補える補償です。

例えば、火災で被害を受けた場合、消火器の設置や消火剤の補充をしたり、盗難の被害に遭った場合は、セキュリティーサービスや防犯カメラを設置したりなどが可能です。

保険会社によって対応できる金額や内容が異なるので、事前の確認が必要です。

10.火災保険の特約(オプション)

火災保険特約。重複加入は注意

各保険会社の火災保険には、それぞれ主となる補償に「特約」という補償を付帯できます。

特約の補償内容の詳細は保険会社により異なります。

また、一般的に知られている特約が自動付帯サービスとして主となる契約についているケースもあります。

賠償責任補償特約

賠償責任補償は、日常生活で偶然起きた事故によって他人にケガをさせてしまったり、物を壊してしまったりした際、損害賠償責任を負った費用を補填できます。

例えば、買い物中に誤ってお店の商品を壊してしまった場合や、自転車を運転中に偶然飛び出してきた人にぶつかりケガをさせてしまった場合などです。

基本的には、1事故につき1億円が限度額の火災保険が多いです。

また、賠償責任保険に重複して加入していても、1つの保険契約のみの保険金しか受け取れません

火災保険以外に、自動車保険や傷害保険などに加入している場合、それらの保険に賠償責任保険が付帯されている可能性があります。

賠償責任保険に単品で加入するよりは、特約で持っていた方が手間が省け、保険料も押さえられますが、重複していないか確認が必要です。

弁護士費用等補償特約

弁護士費用等補償特約は、自身が第三者によってケガをさせられたり、貴重品を壊されたりしたことで、相手方に損害賠償を求める際にかかる、弁護士相談の費用等が補償されます。

基本的には、弁護士への委託費用が300万円、相談費用が10万円を限度としている火災保険が多いです。

11.地震保険が補填する範囲

地震保険の補填範囲。被害の程度4段階

地震保険は、火災保険と補償の範囲の考え方が変わります。

地震保険の場合は、被害の程度によって支払われる金額が決定しています。

被害の程度とは、建物や家財の時価額の何割の被害なのかを「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に分け、認定を行います。

支払われる金額は、「全損」は地震保険金額の100%、「大半損」は地震保険金額の60%、「小半損」は地震保険金額の30%、「一部損」は地震保険金額の5%です。

平成28年以前の契約の区分は「全損」「半損」「一部損」でしたが、大型の地震が続いていることもあり、「半損」が大半損と小半損に細分化されました。

それぞれ時価額が支払い限度額となり、全保険会社の全保険商品と共通です。

また、地震保険は被災者支援の観点で、保険会のみの責任で管理しているわけではなく、巨大地震にも対応できるように、政府でも万が一の運営や予算管理のバックアップを行えるよう準備をしています。

そのため、1回の地震や津波などで保険会社が支払う保険金額の限度額は政府によって決められていて、その総支払限度額は12兆円です。

現時点では、阪神淡路大震災や東日本大震災のような大型地震が起こった際の保険金の支払いも、支払限度額内で対応できています。

しかし、以下のような項目に該当すると、地震保険の支払い対象外になってしまうケースもあります。

  • 故意または重大な過失などによる損害
  • 地震の発生日から10日以上経過した後に生じた損害
  • 戦争や内乱などによる損害
  • 地震や津波などの際の盗難や紛失による損害

また、地震発生時は電気が止まってしまい、電化製品が故障したのか10日以内にわからないケースもあります。

2項目の「地震の発生日から10日以上経過した後に生じた損害」について、災害時は余裕がないことは重々承知ですが、被害が起こったそのままを写真に納めておくと後の申請の際もスムーズに審査が進みます。

参照元:三井住友海上|地震保険 補償内容

12.火災保険と地震保険の保険料

保険料。M・T・H構造と地域

火災保険と地震保険の保険料は、住宅の所在地や構造築年数などによって算出されています。

例えば、火災保険は木造だったり、築年数が古かったりすると火災のリスクが上がるため、比較的保険料が高くなり、地震保険は地域によって地震の頻度が多かったり、液状化のリスクが高かったりすると被害にあう確率が高いため、保険料は高くなります。

建物の構造で燃えにくさの性能の高い順から「M(マンション)構造」「T(耐火)構造」「H(非耐火)構造」の3段階に分かれています。

「M構造」は、コンクリート造のマンションなど、「T構造」は、コンクリート造の戸建住宅(耐火建築物)・鉄骨造の戸建住宅(準耐火建築物)・省令準耐火建物に該当するツーバイフォー住宅など、「H構造」は木造の戸建てや共同住宅などです。

燃えにくい性質の「M構造」の保険料が最も安く、燃えやすい性質の「H構造」の保険料が最も高いです。

また、木造住宅であっても耐火建築物や準耐火建築物であれば「H構造」ではなく「T構造」になります。

耐火性能のある建物だと証明ができる書類が必要な場合が多いので、事前に建築確認書やハウスメーカーに確認しておきましょう。

火災保険の割引制度は、「新築割引」「耐火建築物割引」「オール電化住宅割引」「エコ設備割引」など様々です。

一方、地震保険の割引制度は、「建築年割引」「耐震等級割引」「免震建築物割引」「耐震診断割引」の4種類です。

「耐震等級割引」は、耐震等級1〜3の等級ごとにそれぞれ、10%、30%、50%の割引です。

「免震建築物割引」や「耐震診断割引」はそれぞれ国の定める基準を満たした建物である必要があります。

参照元:構造級別|東京海上日動

13.民間の地震保険と共済の地震保険の違い

民間・共済の違い。金額・範囲・期間

民間の地震保険、共済の地震保険の違いは、「補償額と補償範囲と補償期間」です。

民間の地震保険と比べると、共済の地震保険は一見とても安く感じますが、補償内容はそれなりの違いがあります。

まず、運営について民間の火災保険は、営利を目的とする損害保険会社が運営し金融庁が監督しています。

一方で共済の火災保険は、非営利組織である都道府県の共済組合が運営していて監督しているのは厚生労働省です。

共済火災保険は、民間の火災保険に比べて補償内容がシンプルかつ、保険料が安いと思われがちですが、ほぼ同じ補償内容で比べた場合、それほど保険料に大差はありません

共済火災保険の保険料が安く感じるのは、もともと補償内容がシンプルだからです。

また、共済火災保険は基本的に長期契約はできないため、長期的な視点で比べると民間の保険料の方が安くなる可能性もあります。

火災保険の場合も、被害が起きた場合の補償額の上限が共済の火災保険の方が低かったり、受け取り要件に差があったりしますが、民間の地震保険と共済の地震保険で比べた場合は、補償内容に大きな差があります。

民間の地震保険は、建物と家財それぞれ50%を限度に補償額を設定できますが、共済の地震保険は、基本的には建物が半壊か全壊した場合保険金額の5%が支払われ、特約を付けても建物と家財の補償額の合計の最高20%が補償範囲です。

基本的には、共済保険で万が一の被害をまるごとカバーできるわけではなく、プラスアルファの補償として捉えた方がベターです。

参照元:火災共済 地震特約|全国共済

14.地震保険料控除について

地震保険料控除。条件と控除額

地震保険や生命保険など、自分で保険料を支払っている国民に対しては、自助努力に対する税制優遇が施されます。

国としても、自分自身でできる限りの身を守ってほしいという考えがあるためです。

地震保険に加入した場合、どんな条件で、どのくらいの税制優遇があるのか説明します。

地震保険料控除とは

地震保険料控除とは、年末調整や確定申告を行う際に、該当者に適用される所得控除の1つです。

所得控除は課税対象となる所得から、控除額分を差し引いた所得に税金がかかるので、手元に残る金額(所得)が多くなる仕組みです。

例えば、課税対象となる所得が400万円の場合、37万2,500円(400万円×20%-42万7,500円)が所得税です。

次に、地震保険料の控除額の上限50,000円が課税対象の所得から差し引けるとなると、所得税が36万2,500円になるので1万円の節税となります。

所得控除の種類は様々ですが、代表的なのが「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」です。

元々は地震保険料控除ではなく損害保険料控除でしたが、2006年に法改正があり、2007年分から損害保険料控除が廃止されました。

しかし、経過措置として、一定の条件を満たす長期契約の損害保険の保険料であれば、地震保険料控除として認められます

一定の条件は、以下です。

  • 2006年12月31日までに締結した契約(保険期間または共済保険期間の保険始期が2007年1月1日以後のもの以外)
  • 損害保険契約を契約期間中に解約した際、支払い保険料が返ってくる仕組みかつ、保険期間または共済保険期間が10年以上の契約
  • 2007年1月1日以後に、該当の損害保険または共済保険の補償内容の変更をしていない契約

参照元:損害保険と税金について|一般社団法人日本損害保険協会

地震保険料控除の金額

地震保険料控除は、その年に支払った保険料の額に応じて対象となる控除額が変わります。

種類年間の支払い保険料控除額
1.地震保険料50,000円以下支払保険料の全額
50,000円超一律50,000円
2.旧地震・共済保険料10,000円以下支払保険料の全額
10,000円超20,000円以下支払金額×1/2+5,000円
20,000円超15,000円
1.と2.の両方がある場合1.と2.それぞれの方法で計算した金額の合計(最高50,000円)

参照元:地震保険料控除|国税庁

15.地震・災害大国日本では必須の保険

災害大国日本では必須の保険

東日本大震災の発生から11年。

2011年3月11日14時46分頃に、宮城県牡鹿半島から約130㎞、深さ約24㎞を震源としたマグニチュード9.0の大規模な地震が起こりました。

この地震により、大津波や火災なども起き、死者数1万5,900人、行方不明者数2,523人、負傷者数約5,400人、そして2万5,000人近くの方々が避難生活を送っています。

東日本大震災での地震保険による保険金支払いは、阪神大震災の支払総額約783億円を大きく上回り、支払総額は約1兆2,000億円に上ると言われています。

他にも2020年7月3日夜から朝にかけて起きた熊本豪雨は、球磨川の13カ所で氾濫が起こったり、人吉市街地での浸水は高さ3~5㎡にまで到達したりと戦後最大級の水害となりました。

このように大規模な地震や未曾有の豪雨・台風など、日本各地で深刻な自然災害が発生しています。

国土交通省や都道府県では、洪水が起きた際に水害による被害を最小限にとどめるため、想定の災害規模の降水量で河川が氾濫した場合、浸水が起こりそうな地区を「洪水浸水想定地区」と指定し公表しています。

また、2015年9月に起きた関東・東北豪雨によって堤防が決壊し、氾濫流で住居が倒壊したり、流されたりしたことで孤立してしまった人が大勢いたことから、住民などに対して激しい氾濫流や河岸浸食が発生することが想定される地域には、家屋の倒壊や流失の可能性があることを事前に公表するのが義務化されました。

事前にどのくらいの降水量で、どのくらいの河川の氾濫が起こるか予想し、まとめておくことで洪水時に円滑で迅速な避難指示をだしたり、浸水を防止したりすることができると考えています。

加えて、市町村では、「洪水浸水指定地区」に住む人のため、洪水予報などの伝達方法や避難場所の案内、避難場所の確保のために必要なことなどを記載した「洪水ハザードマップ」を制作して、インターネットやチラシなどに展開しています。

さらに国土交通省では「洪水ハザードマップ」だけでなく、「地震ハザードマップ」の情報発信も行っています。

「地震ハザードマップ」は、全国の震度被害マップや液状化による地盤被害マップ、建物被害マップなど地震による被害の詳細に分けて各地の危険度を表しているマップです。

これらは、火災保険や地震保険とも大きく関連しています。

火災保険や地震保険は、建物の居住地によって保険料が変わっていて、災害リスクが高いところほど保険料が高くなる傾向にあります。

一般社団法人日本損害保険協会の調査によると、2010年以前は、損害保険の支払い保険金額が50,000億円を超える年度はありませんでしたが、2011年の東日本大震災を皮切りに支払い保険金額が50,000億円を超える年度が複数件出てきていています。

年々、火災保険や地震保険の保険料の値上がりや、改定は被害リスクが高まっているために起きています。

特に、火災保険は水災の補償を付けるか付けないかで保険料が大きく変わりますが、理由は災害リスクが高いためです。

地震保険も保険料は高くなる一方ですが、リスクが高いものこそリスクマネジメントの観点から見ると、備えておく必要があると言えます。

火災保険と地震保険の保険金支払事例

支払い事例で見ると、自然災害による被害が起きた時の具体的な被害額が想像しやすいと思います。

それに伴い、どのくらいの保険金を受け取れて、被害を受けた後の立て直しに使っていけるのかを考えていきましょう。

水災(土砂崩れによる被害を受けた事例)

状況:前日夜から激しい雷と雨により、道路が冠水。

未明には激しい雨が猛烈な豪雨に変わり、住宅の裏山が崩れ、大量の土砂が住宅内に流れ込んだ。

土砂が流れ込んだことにより、自宅建物の1階と1階においていた家財が被害を受けた。

被害内容:建物の損害金額は1,570万円、家財の損害金額は225万円、合計1,795万円。

家財の被害内容の内訳は、冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、電子レンジ、テレビなどの電化製品とダイニングテーブルや椅子、テレビ台等家具、衣類、食器など。

保険金額:建物の損害保険金は1,570万円、家財の損害保険金額は225万円。

その他、残存物片付け費用で195万5,000円、臨時費用で100万円と、合計2,074万5,000円が損害保険金として支払われた。

地震(地震により建物に亀裂が生じた事例)

状況:震度6弱の地震により、住宅の棟部分が崩れ、屋根瓦がずれたり、建物の基礎部分に亀裂が生じた。

被害内容:建物の損害額は、200万円。

保険金額:地震保険の損害金額は50万円が損害保険金として支払われた。

地震保険金額が1,000万円の保険契約で一部損認定となったケースのため、「地震保険金額1,000万円×5%=50万円」と算出。

火災(電気ストーブに毛布がかかったことによる出火の事例)

状況:ベッドの近くに置いてあった電気ストーブに、偶然かかってしまった毛布に出火。

自力で消火に成功したが、天井の壁の一部と毛布と電気ストーブ、ベッドが燃えてしまった。

被害内容:建物の被害額は32万円、家財の被害額は33万500円。

建物は、天井を修繕するための仮設工事や解体工事、木工工事、内装仕上げ工事に費用が掛かった。

家財は、ベッドと羽毛布団、マットレス、毛布、電気ストーブ、ホットカーペットが使用不可能な状態になった。

保険金額:建物の損害保険金額は32万円、家財の保険金額は33万500円。

その他、残存物片付け費用が6万5,050円、臨時諸費用が195,150円、合計で91万700円が損害保険金として支払われた。

もし、被害があった時のことを改めて考えておく機会に

被害にあった時のリスクマネジメントを

日本各地で自然災害が増え、被害も深刻化していっている現状を考えると「ここにいれば安心」といったことは、誰も言えないのかもしれません。

もし、自分や家族が被害を受けた時に備えはあるのか、被害を受けた後どのように生活するのか、頼れる人や場所はあるのかなど考えたり、話しておく必要があると思います。

例え想定通りにいかなかったとしても、避難訓練と同じで、シミュレーションしたり準備しておくことは、受けた被害の割合を少なくできるはずです。

火災保険や地震保険も、その準備のひとつです。

契約内容にもよりますが、被害額満額を受け取れなかったり、逆に被害額よりも多い損害保険金を受け取れるケースもあります。

火災保険や地震保険は、被害を受けた場合、迅速な対応がとれることが多いため、経済的な助けになるのはもちろん、生活の見通しも立てやすくなります。

それだけでなく、被害を受けた後のシミュレーションをしておくことで、家をできるだけ購入直後の状態に戻してその場に住みたいのか、今までとは違う仕様の家を立て直すのか、別の場所に引っ越すのかなどの考えの違いで、どのくらいの補償があれば良いのか変わってきます。

当然、補償内容によって保険料も変わるので、万が一を想定することは、保険のかけすぎや、補償の不足を防げます。

何が起こったとしても、命ある限り、できるだけ前向きに生きていけるように、きっかけのひとつになるのが火災保険や地震保険です。

火災保険や地震保険に新規加入したり、見直したり、更新したりするタイミングの方は、改めてどんな補償が必要か、保険金額はいくらにするのか、必要であれば専門家に相談しながら、是非じっくり検討してみてくださいね。

参照元:特集 東日本大震災|内閣府 防災情報のページ

参照元:死者数1万5900人 東日本大震災11年、警察庁まとめ|日本経済新聞

参照元:東日本大震災の保険金の支払|企業地震保険研究所

参照元:洪水浸水想定区域図・洪水ハザードマップ|国土交通省

参照元:元受正味保険金・満期金支払額の推移|一般社団法人日本損害保険協会

参照元:保険金お支払事例|セゾン自動車火災保険株式会社

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